多発性嚢胞腎とは
3.(3) 高血圧について

では一番気をつけなければならない高血圧について説明しよう。
血圧には、上の血圧と下の血圧がある。上は140mmHg以下、下は90mmHg以下が正常である。
そして、正常でもさらに“高いところ”、“正常”、“一番いいところ”の 3つに分けようというのが最近の考え方である。
目安はなるべく130/85mmHg以下であってほしいというのが “正常”、
理想的とされる“一番いいところ”は120/80mmHg以下である。
高血圧というのは、上の血圧が140mmHg以上、下の血圧が90mmHg以上をさす。
多発性嚢胞腎は、高血圧の頻度が高いというのが特徴で、腎機能が正常でも60%の人に、 腎機能が落ちれば80%以上の人に高血圧がみられる。
そのためクレアチニンが1mg/dlで腎機能は正常であっても、高血圧を伴う場合は、
きちんと治療しなければいけない。
さらに、歳を重ね、嚢胞が増え、腎臓が大きくなると、腎臓の働きが落ちて、 高血圧の頻度がもっと高くなる。

また年齢と血圧の関係をみてみると、腎機能が正常でも20歳代(20〜29歳)で65%の人に、 30歳代・40歳代では70%の人に高血圧がみられる。
そして腎臓の働きが少し落ちた人、血清クレアチニンが1.5mg/dl前後の人では
さらに高血圧の頻度が高いので、この高血圧をきちんと治療することが非常に重要になる。

それでは、どうして血圧が高くなるのか。それは腎臓に嚢胞ができると、
その嚢胞の周りを走っている血管が圧迫され、血液がその先へ流れにくくなる。
すると、レニンがたくさん分泌され血圧を上げるホルモンのアンギオテンシンが全身の 細い血管を縮め、血圧を上げることになるからである。
また腎臓の働きが落ちてくると体の中の余分な塩分を腎臓から出す力も弱くなるので、 体に塩分がたまり、血管内に流れる血液量が増え、ますます血圧が上がる。
このことより多発性嚢胞腎で血圧を下げるには、薬で血管を開いてやること、
それから塩分を体の外に出してやること、食事中の塩分を控えることが大事である。


   高血圧の頻度

     1. 腎機能が正常者でも60%(50−75%)、機能低下を
        伴う患者には80%以上にみられる。

     2. 加齢または腎機能低下とともにさらに頻度が高くなる。
        嚢胞増加で腎体積が大きいほど高血圧の頻度も高い。

     3. 透析患者ではほぼ100%に高血圧がみられる。

     4. PKD2連鎖家系の方がPKD1家系より、高血圧の頻度が低く、
        より高齢になって高血圧が診断される(41.4歳対27.4歳)。

     5. ACEgenotypeのなかでもDDgenotypeは高血圧の頻度は
        とくに高くないが、微量アルブミン量が多い。


次になぜ高血圧があると悪いのかを考えてみよう。
第1は、先ほど述べたように多発性嚢胞腎では高血圧によって腎臓の機能が早く落ちてしまうから。
第2は多発性嚢胞腎では、頭の血管に動脈瘤というこぶが5〜10%の人にみられ、
血圧が高いとそれが破れやすい。
第3は、高血圧自身が心臓に負担をかけて、心臓の肥大を起こし、心不全や不整脈あるいは 脳出血を起こしやすくなり、突然死に至ることになるからである。


   高血圧があるとなぜ悪いか

     1. 腎機能の低下が早くなる(高血圧があると47歳で、
        正常血圧だと61歳でクレアチニン値が1.5mg/dl以上となる)。

     2. 脳動脈瘤が破裂しやすい
       (破裂予防に高血圧の厳重なコントロールが求められる)。

     3. 心・脳血管系の合併症を起こしやすい(左心肥大、脳出血)。


また高血圧がある人とない人では、透析に入るまでの期間に差がある。
高血圧の人は、非常に早い時期から透析に入るが、血圧が正常な人ではなかなか透析に入らなくてもいい。