暮らしのヒント

水分摂取・トイレ・睡眠(トルバプタン内服者)

 トルバプタンを内服することで、人によっては1日に相当量の水分摂取が必要になります。水を飲むこと自体も大変ですが、それによってトイレの回数が増え、様々な生活に影響を及ぼしもします。どのようにするとたくさんの水分が飲めるのでしょうか。仕事中にどのようにトイレに行っているのでしょうか。また、トイレによる睡眠の中断をいかに避けているのでしょうか。いろいろなアイデアを伺ってみました。
 人によって1日に必要な水分摂取量は違います。必要水分量は医師と相談をして決めてください。

1)水分の取り方の工夫(種類)

水分の摂取と言っても、水のみを飲み続けることは難しいですね。いろいろな飲み物を工夫して組み合わせることで、飽きずに水分摂取ができるようです。

  • 「水やお茶だけだと飽きてくるので、甘いものを入れたり、無糖の炭酸(レモン味)で口の中をさっぱりさせて、交互に飲んで。カロリーあるの〇〇水はやめて。お茶もカフェインがあるので、水と割ってみたりしています。」(女性・40代)
  • 「冬は、常温であったり、常に温かいのを作っといて、ぬるくさせたもので飲んでって感じ。これを繰り返す。ココアにすることもある。味を変えないと飽きる。ノンカフェインのお茶とかをちょっと入れて乗り切る。ほうじ茶とか麦茶に替えたりする。」(女性・40代)
  • 「3ℓちょっとぐらい水を飲んでいる。秋口から冬場は、温かいのを冷まして飲んだりとか、カフェインがあんまりよくないって聞いたので、ハーブティーとかノンカフェインの特化の水出しのとか探してきたりとか、コーヒーも好きなんでノンカフェインのコーヒーを飲んでいる。」(女性・40代)
  • 「最初は水ばかりだったので、ノンカフェインのお茶を飲んでいます。主治医は水ばかりではなくてジュースも飲んでいいと言ってくださるけど、ジュースは体重を増やすといけないために飲まないようにしています。スープは塩分を気をつけているため半分に薄めています。いろんな味で飲めるように工夫しています。」(女性・40代)

2)水分摂取の仕方(量と時間の配分)

水分を一度にたくさん取ることは難しいので、分けて飲む工夫をされているようです。飲むタイミングは、仕事などの活動や睡眠を考えて決められています。

  • 「1、2ℓを目の前にしちゃうとアッていう感じになっちゃうので、500㎖のペットボトルに移しながら、1本終わったから正を書く、午前中になんとかっていうふうに。やっぱり先生に聞かれるので。」(女性・40代)
  • 「水は500㎖を小分けにして飲んでいる。大体朝の8時からお昼までに2ℓ飲んで、5時までに1ℓ飲んで3ℓ、で、寝るまでに1ℓ、あと夜中に1ℓ飲む。水・麦茶、たまにはジュースも。」(男性・50代)
  • 「仕事場で8時間のうちにある程度飲む。仕事の間に飲んで出しちゃおうと。夜は、最低でも2回はやっぱりトイレに起きちゃうので。」(女性・40代)
  • 「飲むことをどこで稼げるか。貯金しておくような感じになった。」(女性・40代)
  • 「サムスカを内服するとき入院して、尿量は1日に何㎖出るかということを測りました。4500㎖ぐらいだった。そこから逆算して、3,500㎖は水を飲んで、残り1ℓは3度の食事で取るだろうということで。3,500は500のペットボトル7本。朝家を出るときに500㎖を5本持って出かけ、帰宅後から朝までに2本っていう目安で飲んでます。帰宅が7時か8時。それまでで5本は飲み終えるような計算で。午前中2本、午後3本という感じで飲んで、帰ってから今後は寝る、夜中中に、朝までだいたい2本という目安で飲んでます。」(男性・50代)
  • 「会社で、500㎖の入れ物で4回(2ℓ)、自宅で3回をノルマとしている。水を持っていくと重いので、会社でお湯、ポットあるんで、ディーパックだけ持って行って。午前1ℓ、午後1ℓぐらいな感じで飲めればいいなみたいな感じ。」(女性・40代)
  • 「水は8ℓ飲んでいる。大きい400㎖入るコップを買い、朝、会社に行くまでに4ℓ、会社にいるときに3ℓぐらい飲み、家帰ってきて1ℓ。最初はやみくもに飲んで気持ち悪くなって吐いてしまった。そのため、水分をとる時間は20~30分に1回、400㎖にしている。」(女性・40代)
  • 「この間検査で初めてクレアチンが下がってた。水そんなに一生懸命飲まなくても、私なりに飲めてる方なのか。まああなたはこれくらいと先生がアバウトに言って下さった。ほかの人はすごい飲んでいるので、これでいいのかなと思いつつ。それは先生に相談して、いいってことになって解決した。」(女性・40代)

3)のどの渇きや脱水への対応

水分摂取のみに目が向きがちですが、トルバプタンによって喉の渇きを経験したり、脱水になったりすることもあるようです。それを防ぐための工夫も話してくださいました。

  • 「仕事も大変で、トイレに1時間半ぐらいで行きたくなる。常に飲んでないと喉も乾いてくる。上手に付き合うしかない。」(女性・40代)
  • 「水を取り切れないで(脱水で)足がつるようになり、ナトリウムが上がっちゃってもねという話もあったので、ポカリを入れてみたりした。(体勢変えるだけでもびびーってきて、夜中に大変なことになった)。」(女性・40代)
  • 「炭酸水をよく飲む。夏場は氷を口に含んでると、やっぱり喉渇きにくい。」(女性・40代)
  • 「(薬を抜くと)水分の出たり入ったりがたぶん急激に変化してしまうみたいで。どうしてもトイレの量がすごく減るんですね。ぐっと減るんです。そうするとどうしても飲む量もそんなに飲めなくなるので、とっても減るんですね。そうするとその、汗かくときに体の調子がおかしくなるとか、そういうのと同じなのかもしれないんですけれども、私の場合はすごい頭痛がするようになってしまって。」(女性・40代)
  • 「主治医から、飲まないと逆効果で、脱水症状が一番よくないと言われている。」(男性・50代) 
  • 「水を飲み過ぎで貧血と胃の調子が悪くなった。医師と調整して、内服薬で対応した。」(女性・40代)

4)トイレの時間や場所を考える

薬による作用もありますが、水分をたくさん摂取するため、頻繁にトイレに行きたくなります。そのために、活動が制限されたり睡眠不足になったりする経験をしている方もおりました。しかし、工夫によってある程度、コントロールできるようです。

  • 「出かけるときはコンビニの場所をチェックする。研修の時は講師に断っておく。いつも500㎖を2本持つようにしている。」(男性・50代)
  • 「出かけたときに一番困ることってやっぱりお手洗いで、大体まあ飛行機の時間とかに合わせて、それまでにいくらか飲んでて、まあ1時間ぐらい、飛行機は1時間くらいですよね。駅とか空港でしたらすぐにトイレがあるので。それでまた、地下鉄でも電車でも乗ったときはすぐにトイレがあるので。まあそのあたりは、はい。大丈夫ですけど。集団行動っていうのはもうできないです。」(男性・50代)
  • 「トイレの関係で病気のことをある程度長く付き合うことになる人にはオープンにしている。」(女性・40代)
  • 「食事以外で取る水分が1日24時間、3,500cc。頻繁にトイレに行き、夜は、1回か2回は起きる。」(男性・50代)
  • 「通常は、我慢もしちゃいけないんで、例えばトイレは、けっこうお客さんのところでトイレを借りて。会社には薬を飲んでいることは伝えている。会社の中にいるときはデスクワークですから、自由に手洗いには行っている。お客さんのところへ行ったとき、会議とか入ったとき、車で移動をしたりする外出前はしたくなくてもトイレに1回出している。つらいのはトイレ。どうしても我慢しなければならないときがある。」(男性・50代)
  • 「トイレは、夏よりは冬は頻繁。冬はやっぱり起きます。寝る前には飲んでおいた方がいいのかなと、いろいろ考えちゃうけど、寝る前に飲むとやっぱり夜間トイレに行きたくなる。」(女性・40代)
  • 「トイレは1時間に1回どうしても行きたくなってしまうため、会社に事情を話して席を離れてトイレに行かせてもらっている。我慢して2時間はなんとか我慢できるようになった。最初のうちは夜も頻繁だったんですけど、慣れてきたら、寝てる間2回ぐらいは起きてトイレに行く。薬も2回に分けているんですけど、朝、5時ぐらいに最初の薬を飲んで、夜はもう3時ぐらいに飲んじゃう。水も8時ぐらいに飲み終われば、飲んだものが出てると思うので、夜間のトイレが1,2回、多くても2回ぐらい起きればそのぐらいになるので、早めに飲むのがお勧め。起床時間を6時から5時にして、早く水を飲み始める。」(女性・40代)

5)トルバプタンを控える

いろいろな行事があるときは水を飲んだりトイレに行ったりすることが難しい場合があります。そのような時は、トルバプタンの内服を休むこともあるようです。予め主治医にも相談しておくことで、安心して行事に参加できると思います。

  • 「遠出で車の渋滞が予想されるときは薬を減らしている。」(女性・40代)
  • 「コンサート行きたいとか、なんか会議があるとか、子供の入学式、卒業式とか、そういうところが一番困るんで、薬をそういうときは先生に「もう抜きますね」って言って朝抜いちゃったりとか。でも丸1日は絶対に抜けないっていうのが体験としてあって。」(女性・40代)
  • 「旅行や研修とかで1日缶詰め状態になる場合は、サムスカはやめてます。」(男性・50代)
  • 「友達と出掛けたりするときも、トルバプタンは一応飲んではいる。先生も、旅行に行くときは飲まなくていいと言ってくれるけど、飲んだ方がいいかなと思い、薬の量を減らして、水の量も減らして、自分に負担にならないように、工夫して。」(女性・40代)

専門家からのコメント 詳しく見る+
トルバプタンは、自由に水を飲んだり、排泄ができるときに内服する薬です。どちらかに支障があるような場合は、服薬することができません。また、下痢や嘔吐がある際には、十分な水分摂取ができないので、症状が治まるまでトルバプタンは飲まないでください。(『患者さんとご家族のための多発性嚢胞腎(PKD)療養ガイド 2019』p.36より抜粋)トルバプタンの服薬を始める際に、これらの注意事項をよく確認するとともに、気になる点については相談をしておきましょう。
1.暮らし方の知恵 6)災害時の経験をふまえて備える <薬の内服と飲水に関すること> の「専門家からのコメント」も参照してください。

6)同僚に伝える

薬の服用は仕事への影響があるため、職場に病気のことを話すきっかけになる場合もあるようです。

  • 「サムスカのため飲水をするので会社の同僚たちには話し、会社には塩分制限のため弁当持参している。飲み会などでも無理強いされることはない。普通に接してくれている。」(男性・40代)
  • 「サムスカ服用に際しては、社長や薬剤師仲間の理解があって、外勤のない状況にしてもらい乗り越えた。」(女性・40代)