暮らしのヒント

病気との向き合い方

1)病気を受け止める

PKDは、完治のための治療法や予防法が明らかになっていない遺伝性疾患・指定難病であることも関係し、病気に対していろいろな意味づけを行っています。

2)ストレスをためずに楽しむ

先のことを考えてストレスに思ったり、病気のことに気を配りすぎたりせずに、長い目で物事を考えて生活を楽しむことも工夫として語られました。

  • 「あなたは能天気だから腎機能が下がらないね、と言われたものですから、あまりくよくよ先のことは考えないで、のんきに笑って暮らしています。それが一番です。」(血圧・女性・70代)
  • 「ある程度、あんまり自分に厳しくするとストレスたまってかえっていけないのかもしれないとか、勝手に思っています。」(透析・女性・不明)
  • 「ストレスをためないようにしています。透析とか腎臓病の患者はサイコネフロロジーとかあるので、精神的に苦しむ人が多いので、基本的に多発性のう胞腎は、皆さんが考えてる以上に長生きするので、そんなに短いスパンで物事考えない方がいいと思います。だから、あまり過度に一喜一憂しない方がいいと思います。」(透析・男性・50代)
  • 「わたしの誕生日のときだけは小っちゃいケーキ1個食べるとか。お楽しみで。例えばイチゴの季節だったら1回はイチゴ食べるとか。厳重にしてても寿命は寿命やし、あかんもんはあかんし、そのとき楽しんでた方がいいんじゃないかって思いますし。透析して長いし、気持ちとしたらもう、ゆうたらおまけ?おまけの生活っていうかねえ?現在さしてもらってるので、ちょっとくらい楽しんでもいいかなって。だから透析で生きているってことは、ありがたいなと思う。」(透析・女性・60代)

専門家からのコメント 詳しく見る+
ストレスをためずに楽しむの項目にある患者さんの語りに「サイコネフロロジー」という言葉が登場します。サイコネフロロジー研究会のホームページには、次のように説明をされております。
「サイコネフロロジー(psycho-nephrology)は、慢性腎臓病患者さんやご家族の「こころ」を扱う学問領域です。腎臓病学(nephrology)と「こころ」を扱う学問である精神医学(psychiatry)、心理学(psychology)、心身医学(psychosomatic medicine)とがお互いの知恵を出し合いながら、ともに作り上げます。」
(サイコネフロロジー研究会HP http://www.jspn-ndt.com/greeting.html より)

3)仕事や役割をもち続ける

人によって、病気の状態も職場の状況も違います。これまで仕事をしてきた方が考えたことも語られました。

  • 「少し過保護にして、例えば仕事を辞めてしまうと、精神的につまらなくなってしまう気がして、細々でも続けていきたい。」(未・女性・50代)
  • 「宗教をやっているので気持ちが前向きになっている。気楽な仕事も助けになっている。」(未・女性・60代)
  • 「やっぱり仕事ですね。ちょっと大げさな言い方ですけど、社会貢献みたいに、やっぱり社会の中の一員でいられるっていうことですね。もし仕事がなかったら、私きっと何のために生きてるんだろうって、そんなふうに思い込んでいくかと思います。」(透析・女性・不明)
  • 「腎臓大きくなって腹部大きくなって同僚から見られたり、いろいろ状況がそれぞれだと思うので、一概にこうしたらいいってのは言えないのかなって思います。自分なりの状況に応じた仕事の働き方っていうのを模索していくしかないなっていうか。」(透析・女性・50代)
  • 「仕事なり、仕事じゃなくてもいいと思うんですけど、やっぱり自分が何らかの例えば役割があるとかということで、やりがいとか生きがいの問題ですかね。没頭できるものとかせざるを得ないものを持ってれば、それが生活の中心になって、あまり不安っていうのはなくなるんだろうなっていう気がしますけどね。最終的に、命にかかるということはなくなるんでね、通常は。透析という手段がありますから、そこは難病の中でも、私なんかはラッキーな方だったと思ってますけどね。」(透析・男性・60代)

4)外出をして人に会う

友人と会ったり、仕事以外にも社会的な役割をもったりすることで、外に出る機会を作ることを勧める意見がありました。こうした工夫によって、気持ちも変わるようです。

  • 「なるべく外へ出ようとか、友達とはなるべく会うようにしています。タクシーで行ってでも友達に会うとか。」(トルバプタン・女性・60代)
  • 「前はいろんな活動をしていたんですけど、今ほとんど出歩けなくて、あの、全然できないので、何ていうのかな、なるべくでも気力というか、何かをやろうという気持ちをなくさないようにしようとは思っています。」(トルバプタン・女性・60代)
  • 「基本的に自分の趣味ですよね。趣味を大事にしいていれば、趣味をやっていれば、人に会うし周りにも出るし、なるべく外に出て周りの人と会うのがいいと思う。」(透析・男性・50代)
  • 「患者会や学会等の役職を多く担当、なるべく外に向かっていろんな活動した方がいい。仕事は退職したけれど、けっこうやることがあるといい。やっぱり外に出向けて、こう外になるべく出て行けるような場があるといい。」(透析・男性・60代)

5)趣味や楽しみをもつ

生活を豊かにする工夫として、自分の好きなことや趣味など、没頭できることを勧める声もあります。

  • 「本を読むのが好きで、本を読んでいれば何日でも暮らせるっていうか。ちょっと頭の体操みたいなパズルで、ちょっとそんなことに夢中になったり、あとは手仕事ですかね、編み物とか縫物。動かなくてできることはなるべくしよう。」(トルバプタン・女性・60代)
  • 「基本的に自分の趣味ですよね。趣味を大事にしいていれば、趣味をやっていれば、人に会うし周りにも出るし、なるべく外に出て周りの人と会うのがいいと思う。」(透析・男性・50代)

6)家族と支え合う

一緒に暮らす家族との相互の配慮や支援が、生活を明るくしたり気持ちを楽にしたり、負担を軽減したりしています。

  • 「主人に、私の体のことも十分理解してもらってる。だから家事の分担も、主人もよくお掃除とかしてくれるし、ゴミ出しとかもしてくれるので。その辺は自分で適当にというか力を抜きながら。体になるべく負担がかからないような形ではしてます。」(未・女性・60代)
  • 「上手に、疲れた、疲れた、腎臓、腎臓(の病気)みたいなことを言いながら、横にならしてもらったりという手抜きでの方法でやっている。そうやっていられるのでありがたい。」(トルバプタン・女性・40代)
  • 「息子のこともあるので暗くしないように、まあ結構この程度でも楽しいよっていう感じで。」(トルバプタン・女性・60代)
  • 「やっぱり心がけているのは、もしかすると娘はそうかもしれないっていう状況じゃないですか。それだったら、なるべく私が楽しんでる方が気が楽になるだろうな、みたいな。」(トルバプタン・女性・40代)
  • 「夫(家族)に対して明るくふるまうようにしています。父が逆の人で家族が暗くなっていたので。」(透析・女性・50代)
  • 「私がしっかり勉強して、この病気と闘って治療に専念することで、息子に希望が与えられるんじゃないかと思ってですね。前向きに自分に、私がまずこの病気に前向きに取り組まなきゃいけないなと思って、という気持ちではおります。子どもに遺伝させてしまったことに関しては、ただ私自分で思いましたのは、私が深刻にならずに前向きにそんなに辛そうな顔をせず、この病気と闘って移植もそんなに辛そうじゃなく移植手術を受けて、することによって子どもも気が楽になるんじゃないかと思って。見本を示すというかですね。そういう気持ちでいようと。辛そうじゃなくこの病気と付き合っている姿を見せることによって、子どもに安心感を与えたいなっていうのが、ただ自分で考えたことはそれだけでしたね。」(移植・女性・60代)

7)病気についての知識をもつ

病気に関する知識や経緯を知っていたほうが良いという声が語られています。

  • 「病気にもし自分がそうなったら、ある程度自分が今後どうなるかっていうのは知っておいた方がいいと思います。ならないかもしれないしなるかもしれないけれども、多発性のう胞腎というのがどういう病気かっていうことと経緯とか。」(トルバプタン・女性・50代)
  • 「PKDについて、透析で命を救われるっていう知識しかなかった。」(透析・男性・60代)

専門家からのコメント 詳しく見る+
病気に関する知識は、『患者さんとご家族のための多発性嚢胞腎(PKD)療養ガイド 2019』(ライフサイエンス社)および、下記のホームページに多くの情報が掲載されております。参考にしてください。

<PKDに関する情報が掲載されているwebページ>

・PKDFCJ(多発性嚢胞腎財団日本支部)
http://www.pkdfcj.org/

・難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/295

・エビデンスに基づく多発性嚢胞腎診療ガイドライン2017(医療者向け)
http://jin-shogai.jp/policy/pdf/PKD_2017.pdf

・日本腎臓学会(一般の方向け)
http://www.jsn.or.jp/global/general/

・腎臓Net
http://www.jinzou.net/

・順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科
(常染色体優性多発性嚢胞腎:ADPKDのはなし)
http://juntendo-urology.jp/disease/adpkd/

・多発性嚢胞腎研究講座
http://www.pck.jp/

・大塚製薬 多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト
https://adpkd.jp/

8)患者同士で繋がりをもつ

多発性嚢胞腎は比較的まれな病気なので、欲しいと思う情報がすぐに得られないことがあります。そのようなときに、患者さん同士のつながりから得られる情報やアドバイス、経験の共有が、患者さんの生活をよりよくするのに役に立っているようです。特に、患者会は、主治医やインターネットからの情報に次いで活用される情報源となっています。

  • 「自分でネットでいろいろ調べたりして、患者会にも参加させてもらった。主治医からというよりも、私がちょっと動いている感じ。情報が非常に少ないので、主治医もそんなにこの病気のこと詳しくないんじゃないかと思うので、講演会などがあれば、行ける範囲で行きたい。ブログなんかも見たりもするんですけど、そういう経験談的なものが得られるのであれば、どんなものでも欲しいなというふうに思います。将来後悔しないようにと思っている。」(未・女性・40代)
  • 「何か1人でいろいろネットで調べたら知識は入りますけど、家族会でお話を聞いたら元気が出たりすることもあると思うんで。」(未・女性・50代)
  • 「患者会で、透析になっても悪いことばっかりじゃない、大丈夫ですよっていう話をされたときがあって、それを聞いて、透析になったからって終わりじゃない、生活の質もそれをやったことで上がるってこともあるので、その方法で生活していけるんだったら、それでいいのかなっていうか、安心した。」(トルバプタン・女性・40代)
  • 「1年に何回か、そういう患者さんばかりが集まる会に参加してたら、やっぱりちょっと気が楽になるというか。いろいろ意見も聞けるし。できれば遠くの方がいいかな、やっぱりこう、分かるじゃないですか。あのなんていうかな。もし近所の人がいたりしたら。まあ隠すことでもないんですけど。」(トルバプタン・女性・50代)
  • 「Twitterやなんかでも、「お腹が痛い、辛い」とか、言える相手がいる。その「こういうふうで不安なんだけど」って言う、そういう場所がある。それが同じ病気の人でもいいし、全然そうじゃないただの友達でもいいと思うんですけれども、そういう相手がいるっていうのがすごく大事なんじゃないかなって思うことが多いです。」(トルバプタン・女性・40代)
  • 「反対に教えてもらいたいのが、皆さんがどんなふうにしておられるのかなってこと。やっぱりその話せる人はいるんですけど、そんなに話すわけでもないし。母でもいたら母ともいろいろ話ができるけど、もう亡くなってしまってるので、なかなかその気持ちを……ちょっと友達になった人はいるけど遠く離れてるので、そんなにそんなに話すわけにもいかないし。なんかすごくやっぱり不安になっては、どうしようどうしようとか、これからどうなるんだろうっていう不安な気持ちはありますね。なんかそういったところ、皆さんどうしておられるか私も聞きたいと思うような。」(ルバプタン・女性・40代)
  • 「Twitterで情報を得たり仲間を見つけている。「足のムズムズ我慢します」って書いたら、ゴルフボール踏むと、気持ちいいよとか教えてもらって。」(トルバプタン・女性・40代)
  • 「母親が透析をしていて辛そうだった。30数年やっていた。(患者会の)会場に来られた方は全然元気で楽しく生活してる様子と教えてくれたんで、透析してる方はみなつらいんだと思っていたけど、そうじゃない。逆に早めに切り換えてよかったと言ってる方がいたんで、そういう考えっていうか人もいるんだなっていう、ちょっとびっくりしたというのもあった。」(トルバプタン・女性・40代)
  • 「患者会に入会しようと思っている。「のうほう倶楽部」というサイトを見て情報を得ている。(患者会への入会は)自分と同じような環境の人と知り合えれば、どうですかって聞けるため。」(トルバプタン・女性40代)
  • 「患者会に行けば、同じ病気の人がしゃべっているので。「ああ」って、自分の頭の中が整理できるような気がする。」(透析・女性・50代)
  • 「患者会に行って情報を仕入れている。」(透析・男性・50代)
  • 「息子の友達のお母さんが、私が先に腎臓の薬飲んでるのを聞いて、私も飲み始めてっていうような話をしている。PKDの患者会に、今年と去年参加させていただき、ほかの方のお話をちょっと聞けた。参考になることも不安になることもあった。」(透析・男性・50代)
  • 「地方に住んでいると、できればこの、やっぱりどっちか言うと関東、東京の方のあれ(会)ですので、こっちにもそういうものがあればなあとは思います。」(移植・男性・50代)